気高き不動産王は傷心シンデレラへの溺愛を絶やさない
 スマホで時計を確認すると、そろそろ約束の二十一時になろうとしていた。

「よしよし、ちゃんと来たな」

「……宗吾くん」

 名前を呼ぶのも不快な相手を見据え、持っていたスマホをバッグの中にしまう。

「あなただよね。志信さんの会社にいたずらを仕掛けているのは」

「あいつ、会社であったことまで話してるんだな」

「答えて」

「そうだったらなんなんだよ。証拠はあるのか? ねえよな」

「今の発言が証拠だと思うけど、違うの?」

「はははっ」

 明らかに私を見下した笑い声が、背筋を這う不快感を煽った。

 歩み寄った宗吾くんが私の前に立つ。

「なあ、優陽。お前、いつからそんな面倒な女になったんだよ? 前は違っただろ? いつも周りをびくびくうかがってたじゃねえか。いつもおとなしいいい子だから、目ぇかけてやってたのに。わけのわからねえ男になびきやがって」

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