気高き不動産王は傷心シンデレラへの溺愛を絶やさない
 言いたいことは山ほどあったけれど、もうこの男のために無駄な声を発したくなかった。

 きつく睨みつけると、それが気に入らなかった様子で舌打ちされる。

「親に死なれてかわいそうなお前に優しくしてやったのは誰だよ。ちょっと会わねえうちに、どうやってあんな金持ちと知り合った? ん?」

「あなたには関係ない」

「ほんと、かわいくねえなあ。いいのか、そんな態度で。大事な旦那がどうなっても知らねえぞ」

「志信さんになにをするつもりなの?」

「なにをしてほしい? ウェヌスクラースの名前にダメージを与える方法ならいくらでもある。伝手を使ってマスコミに情報売ってもいいし、SNSで適当なネタ流して炎上するように仕向けてもいい」

 どんな伝手があるのかは知らない。はったりの可能性もあったから、話半分に聞いておく。

「せっかくお前の写真を撮ったんだし、いい具合に使ってやろうか?」

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