気高き不動産王は傷心シンデレラへの溺愛を絶やさない

　広い胸に顔を埋めるも、すぐに外だったことを思い出し、名残惜しさを感じながら離れた。

「うん。志信さんもありがとう」

「ありがとうは俺の台詞だよ。頼ると決めてくれて、ありがとう」

　どちらからともなく自然と手を繋いで、宗吾くんが逃げて行ったのとは反対側の道へ歩き出す。

　守ってくれたのがうれしくて、今日は私のほうから指を絡ませた。



◇　◇　◇



　心身ともに疲れた夜というのもあって、家に帰るなり優陽はすぐ眠ってしまった。

　安心しきった寝顔を眺めているだけで幸せな気持ちになったが、まだ俺にはやることが残っている。

　万が一にも優陽を起こさないよう、スマホを手に自室へと向かった。

　ドアを閉め、見慣れた番号に電話をかける。

『……もしもし。こんな時間にどうしたんです？』

「悪いな、魅上。頼みたいことがあるんだ」