気高き不動産王は傷心シンデレラへの溺愛を絶やさない
 彼を見つめる私の心が変わったからなのだろう。

「愛している。これからもずっと、俺のそばにいてくれ」

 はい、と言ったつもりが声にならない。

 首を縦に振って勢いよく腕の中に飛び込むと、大好きな香りをいっぱいに感じた。



 観覧車が一周し終わると、志信さんは私の手を引いて懐かしい場所に連れてきてくれた。

 転んだ私の休憩スペースとして使われた、あのスイートルームだ。

「少し待っていてくれ」

「うん」

 志信さんは私を部屋に残し、外へ出て行く。

 しばらくして戻ってきた彼の手には、これまた懐かしいものがあった。

 あの日、彼が用意したものに着替えたために置き去りにされた、ドレスと靴だった。

「まだ取ってあったの? とっくに処分しただろうなって思っていたのに」

「いつまでも取りに来なかったからな」

 志信さんがソファに座る私の前へとやって来て、膝をつく。

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