気高き不動産王は傷心シンデレラへの溺愛を絶やさない
 靴を脱がすその手つきに、胸の奥で小さな泡が弾けるようなときめきを覚えた。

「それ、ずっと気になっていたの。こんな立派なホテルなら、クリーニングして郵送します……って対応をするものでしょ? なのに取りに来いって言うから」

「郵送したら、君にまた会う機会を失くすだろう?」

「会いたいって思ってくれていたの……?」

「ああ、もっと一緒にいたかった。これも叶った夢のひとつだな」

 もともと私の靴だったそれは、当然ぴたりと足にはまった。

 私を見上げる志信さんが足の甲に唇を押し当てる。

「また靴が脱げたら取りに行ってやる。新しいものを用意して、履かせよう」

「……うん」

「君にとっての特別は誰にも譲らない。それは俺だけに許されたものだ」

 優しい志信さんの唇からこぼれる独占欲は、私を簡単に喜ばせた。

「私も一生、志信さんの特別でいたい」

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