気高き不動産王は傷心シンデレラへの溺愛を絶やさない
 まだ彼と過ごして一時間ほどしか経っていないけれど、そんな短い時間でも惹かれる部分をたくさん見つけた。

 会話を上手に盛り上げてくれるところや、さりげなくエスコートしてくれるところ。ホテルの感想を聞き流さず、素直に喜んでくれるところ。

真面目そうな人だと思っていたのに、意外と茶目っ気があるのか、おもしろおかしく裏話を教えてくれるところも素敵だ。

「話していてこんなに楽しいと思った男性は初めてです」

「そんなふうに言われると照れくさいな。ありがとう」

 照れくさいと言う割にはあまり表情に出ていない。

 ちらりと覗いた冷静さが、魅力的な一面を語ろうとした私の口を閉ざしてくれた。

 危なかった。もう少し遅かったら、彼を誉める言葉が止まらなかったに違いない。

 それを思うと急に気恥ずかしくなって、目を合わせていられなくなる。

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