気高き不動産王は傷心シンデレラへの溺愛を絶やさない
 触れることさえおこがましい気がしておそるおそる尋ねると、中途半端に宙に浮かせていた手をそっと取られる。

 指先が触れた瞬間、自分の胸が高鳴ったのがわかった。

「ああ、もちろん」

「じゃあ、お言葉に甘えて……」

 緊張で手が震えるのを感じながら、指先を軽く曲げてみる。

 そうして水無月社長の手にゆだねると、胸の奥でくすぐったい疼きが生まれた。

「ここの階段もとても素敵です、ね」

 丁寧にエスコートされながら階段を一歩ずつ下りて、彼を意識しないよう話しかける。

「手すりも、すごく豪華で……」

 白く塗られた手すりは、曇りのない金で装飾されていた。

複雑な蔦模様が美しく描かれていて、彼の手と同じくらい触れるのに躊躇してしまう。

「この辺りの装飾を任せた業者に伝えておこう。……正直に言うと、こんな細かいところまで褒めてくれるお客様がいるとは思わなかったな」

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