気高き不動産王は傷心シンデレラへの溺愛を絶やさない
「……さて、ホテルの中もだいぶ案内したことだし、そろそろエントランスホールに戻ろうか。ふたりの話も終わった頃だろう」

「そ、そうですね」

 そう言われるまで、円香の存在がすっぽり頭から抜け落ちていたと気づく。

 ごめん――と心の中で謝りながら、夢のようなひと時が終わる予感に、少し切なさを覚えた。



 夢から覚めるまで、もう少しだけ猶予がもらえるなんて誰が想像しただろう。

 しかも、私だけじゃなく水無月社長も一緒に過ごす時間を楽しいと感じていたなんて。

 円香から連絡がないのをいいことに、私は水無月社長とホテルの外へ向かった。

 セレモニーにてスタッフから説明があった大庭園は、想像よりずっと広く立派なものだった。

 三つのエリアの中心部に位置する庭園は、入り組んだ道が中央の広場に繋がる形で造られている。

< 30 / 276 >

この作品をシェア

pagetop