気高き不動産王は傷心シンデレラへの溺愛を絶やさない
 道の左右には等間隔に木が植えられていて、人工的でありながら、森の中を散策しているような気持ちにさせる。とてもリゾート施設内を歩いているとは思えない。

「こんなに広いと、全部回るだけで一日かかっちゃいそうです」

「それぞれのエリアを回る専用の電車とバスを用意しているから、移動自体は簡単だ。もっとも、それらを駆使したところで一日に回りきれるものじゃないが」

 その言葉には、『たった一日で満足できるような施設は作っていない』という関係者としての自尊心が滲んでいた。

 ホテル内を案内してくれた時からそうだったけれど、彼は自分や、自分の携わったものを卑下するような言葉を言わない。

 見事なホテルを作り上げた仲間たちへの感謝と尊敬の念が滲む説明は、聞いていて気持ちがよかった。

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