気高き不動産王は傷心シンデレラへの溺愛を絶やさない
「もしかして、上から見たらなにかも模様になっているとか、そういう仕掛けがあるんですか?」

「いつか自分の目で見てみるといい。俺の口からは言わないでおく。楽しみを奪いたくないからな」

 そこまで言われるとますます気になってしまう。

 でも彼は本当に黙っておくつもりのようだった。

「じゃあ、その時を楽しみにしておきます」

「ああ。案内が必要なら呼んでくれ」

「……すごい特権ですね?」

 冗談なのはわかっていた。私が彼とこうやって過ごすのは今日限りだ。

 だけどどうしても想像せずにはいられない。

 もしも彼とふたりで観覧車に乗って、大庭園の景色を一緒に見られたら――。

 そう考えて首を左右に振る。

 水無月社長が私とふたりで観覧車に乗るなんて、またふたりでこんなふうに過ごす未来がくる以上にありえない。

「庭園を見た君がどんな反応をするか楽しみだな」

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