気高き不動産王は傷心シンデレラへの溺愛を絶やさない
 彼が本当に楽しみにしているかのように言うから、胸がつきんと痛んだ。

 もう少しだけ一緒に過ごせればいいと思っていたのに、もっともっとと欲張りになってしまう。

 驚いた私を見た、彼の反応をこそ見てみたい。

 叶わない未来を思って急に切なさが込み上げてくる。

 こんな気持ちは知らない――と思ったその時だった。

「ふやっ」

 やわらかな地面に足を取られて体勢を崩し、奇妙な声が飛び出る。

「大丈夫か?」

 咄嗟に水無月社長が支えてくれたおかげで転ばずに済んだものの、すっぽ抜けた靴が地面に倒れていた。

「わっ……と、とっ」

 靴を履いた片足でバランスを取ろうとし、勢いよく腕の中に飛び込んでしまった。

 すみません――と言おうとしたのに、声が出てこない。

 支えてくれている腕は意外なほど頼もしく、細身に見えるぶんギャップが大きい。

 それにこの距離の近さ。

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