気高き不動産王は傷心シンデレラへの溺愛を絶やさない
「そういえば昨日は雨だったな。地面がぬかるんでいたらしい。もっと早く気づけばよかった」

「別に水無月社長が悪いわけじゃありません。天気なんてどうにかできるものでもありませんから」

「だが、経営者として事前に対応を考えることはできただろう。砂利道にしておくとか……」

 靴は泥で汚れてしまっていた。

 申し訳なさそうに眉を下げている彼の視線を追うと、ドレスの裾にも跳ねた泥がついている。

「私こそちゃんと気をつけていればよかったんです。気にしないでください」

「そういうわけには。ドレスまで汚してしまった。……きれいだったのに」

「ハンカチで拭えば大丈夫です。こんな靴で歩き回ったら、あちこち泥がついちゃいますしね」

 そう言ってバッグからハンカチを取り出そうとすると、その手を止められた。

 自分よりずっと大きな手に触れられて、びくりと肩が跳ねる。

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