気高き不動産王は傷心シンデレラへの溺愛を絶やさない
「ハンカチまで汚してしまうわけにはいかない。ドレスと靴を用意させてもらえないか? ホテルにあるものから見繕うことになるが……」

「そこまでしていただくわけにはいきません……!」

「俺の気が済まない」

 悔やんでも悔やみきれない、という表情で見つめられて言葉に詰まる。

 結局、折れたのは私のほうだった。

「……わかりました。お言葉に甘えてお借りしますね」

「いや、用意したものは君のものにしてくれ」

「さすがにそれはお断りさせてください。用意してくださるだけでも充分ですよ」

「それなら後日、改めてお詫びの品を贈らせてもらう」

 またぐっと言葉に詰まって口ごもる。

 今、用意できるもの以上のものを渡される気がしてならない。

「じゃあ……今、いただきます。本当にいいんですか?」

「ああ。俺がしたいんだ」

 長い指がドレスの裾についた泥の近くをさまよう。

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