気高き不動産王は傷心シンデレラへの溺愛を絶やさない
 それほど目立つ汚れでもないのに、かなり気にしているらしかった。

 足もとに気がいかなくて転んだ私のせいだと考えると、申し訳なくなってくる。

「すぐに部屋を用意しよう。……そういえば部屋の中までは見せていなかったな。ちょうどいい」

 そこまでしなくても、とまた喉まで出かかった。

 だけど、言ってもきっと彼は私が断れないようにするだろうと考えてやめておく。

「そうと決まったらすぐに着替えよう」

「そう――」

 突然、水無月社長の手が背中に触れ、膝下に潜り込む。

「ま、待ってください。なに……!?」

 なにをされるのかすぐに気づき、慌てて彼の広い胸に手を添えた。

「暴れないでくれ。この靴じゃ歩き回れないと言ったのは君だ。それに軽くとはいえ足をひねったんだろう?」

「言いましたけど……っ」

「だったら歩かせるわけにはいかない。それとも背負うほうがいいか?」

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