気高き不動産王は傷心シンデレラへの溺愛を絶やさない
「本当に、お気持ちだけで大丈夫ですから!」

 水無月社長に抱き上げられたり、おんぶされたりするなんて、考えるだけで恐れ多くて眩暈がする。

 ドレスや靴をもらうくらい、彼に運ばれることに比べたらかわいいものだと思ってしまうほどに。

「こんな、申し訳ないですし、恥ずかしいです……」

「野瀬さん」

 子どもに言い聞かせるように名前を呼ばれ、また言葉に詰まる羽目になる。

 こうなると、私に言えるのはひとつだけだ。

「……わかり、ました」

「落とす気はさらさらないが、首に腕を回してしっかり掴まってくれ」

 改めて抱き上げられ、顔を覆いたくなる。

 ただでさえこんなに密着しているのに、彼の首に腕を回して掴まるなんてできそうにない。

 でも、水無月社長は私を横抱きにしたままなかなか立ち上がろうとしなかった。

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