気高き不動産王は傷心シンデレラへの溺愛を絶やさない
 私がちゃんと掴まるまで待ってくれているのだと気づき、意を決してぎゅっと抱き締める。

「……軽いな」

 やっと立ち上がった水無月社長がぽつりと言った。

「重いです……」

「これで? このまま君の家まで運べそうなくらい軽いのに」

 本当にそんなことになったら、家にたどり着く前に私は恥ずかしさで失神しているに違いない。

 顔も上げられず、かといってそっぽも向けず、うつむくばかりの私に、水無月社長はもうなにも言わない。

 細身からは想像もできないたくましい腕に支えられ、私の心臓はいつ破裂してもおかしくないほど激しく高鳴っていた。



 ある程度覚悟していたのに、水無月社長のお詫びは私の想像を超えていた。

 着替えのために急遽用意されたのは、ホテルの最上階。いわゆるスイートルームだ。

 エントランス部分だけでも私が住んでいる家とはまったく違っている。

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