気高き不動産王は傷心シンデレラへの溺愛を絶やさない
 最寄り駅まで徒歩十五分、家賃七万のワンルームアパートと比べるほうが間違っているといえばその通りなのだけれど。

 説明されずとも特別感を訴えてくるその部屋は、調度品も素晴らしかった。

白を基調とし、ところどころが金で装飾されている。

ホテル全体と同じテーマの部屋だということなのだろう。それもまた、ここがこのホテルの特別な部屋という事実を再認識させてくれる。

金が使われているのに決して下品には見えず、むしろ高級感を引き立てているのも感動的だった。

どの程度の装飾にするか、部屋のどこにどういった形で配置するのか、完璧に計算されているからこうなっているんじゃないかと思わされる。

棚に用意されたグラスはクリスタルガラスで、うっかり割ってしまったらと考えただけで手が震えた。

「今、ドレスと靴を持ってくる」

「……ありがとうございます」

< 42 / 276 >

この作品をシェア

pagetop