気高き不動産王は傷心シンデレラへの溺愛を絶やさない
 やっと彼の腕から解放されてほっとしたのも束の間、下ろされたソファはあまりにもふわふわすぎて逆に恐ろしい。

 私のような一般人が座っていいものなのだろうか、なんて思っている間に、水無月社長は部屋を出て行った。

 とりあえず、靴は脱いでおく。

 床や絨毯を汚さないように気をつけながら脇に置き、ひとまずひと呼吸した。

「……夢みたい」

 今日、何度そんな感想を抱いただろう。

 円香と一緒だったらきっと部屋を探検しただろうけれど、今はとてもそんな気になれない。

 社長直々に案内してもらったうえに、靴とドレスの用意まで。しかも借り物じゃなく、そのまま私のものにしていいときた。

 本当にいいんだろうかと思いながらしばらく待っていると、ノックの音が聞こえた。

 ドアを開くと、そこには水無月社長以外の女性スタッフの姿がある。

「好きなものを選んでくれ」

「えっ」

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