気高き不動産王は傷心シンデレラへの溺愛を絶やさない
 スタッフが台車を部屋の中へ運びこんだ。

 積み上げられた箱は大小あり、水無月社長の発言からしてこれがドレスと靴なのではないかと考えられる。

 ただ、ちょっと数が多い気がした。どう少なく見積もっても十ずつはある。

「好きなもの……ですか」

「ああ。気に入るものがあればいいんだが」

 恐れ多い気持ちがまた込み上げる。

 でも、さすがにどうするのが一番丸いか自分でもわかっていた。

 ここはおとなしく水無月社長の厚意に甘えて、好きなものを選ばせてもらおう。

「俺は外に出ている。――彼女に手を貸してやってくれ」

「かしこまりました」

 水無月社長は私のことをスタッフに任せて部屋を出て行った。

「社長はどちらへ……?」

「お着替えの邪魔にならないよう、席を外したのだと思いますよ」

「……わざわざ気遣わせてしまって申し訳ないです」

 スイートルームにはいくつも部屋がある。
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