気高き不動産王は傷心シンデレラへの溺愛を絶やさない
私がそのうちのひとつに移動すればいいだけなのに、彼は外に出るという選択をしてくれたようだ。
こうなったら外で待たせないためにも、早く選んだほうがいいだろう。
「ドレスから見せてもらってもいいですか?」
「はい、承知いたしました。それではこちらの箱からお開けいたしますね」
女性スタッフの手を借りて着替えを済ませた後、廊下にいた水無月社長を再び室内へ迎え入れた。
着替えを手伝ってくれたスタッフが入れ替わりに出て行き、荷物を載せた台車を運んでいく。
「すみません、お待たせしました」
「ああ。今、適当に軽食を頼んで……」
言いかけた水無月社長が私をまじまじと見て言葉を切った。
「なにかおかしかったでしょうか……?」
「いや、きれいだなと。さっきまでのドレスも似合っていたが、この色も素敵だ」
率直な褒め言葉に胸がきゅっとした。