気高き不動産王は傷心シンデレラへの溺愛を絶やさない
 私が選んだのは、一番シンプルなクリーム色のドレスだ。

 触らなくても生地のなめらかさや、装飾の細かさから、普段は手の届かない価格のものだと思ったけれど、ほかのドレスはこれ以上に思えたからだった。

 着ている私に華がないせいで、きっとちぐはぐに見えるだろうと思ったのに、褒めてもらえて純粋にうれしい。

「私なんかにはもったいないドレスです。ありがとうございました」

「もったいないどころか、君のために作られたドレスじゃないかと思ったくらいだ。本当によく似合う」

 これ以上褒められたら恥ずかしくて卒倒してしまいそうだ。

「あ……ありがとうござい、ます」

耳まで熱くなるのを感じて言ったお礼が途切れ途切れになる。

 男性に褒められた経験なんて一度もない。

 いや、あることにはある。だけど、〝彼〟の言葉はどこまで本気だったのだろう。

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