気高き不動産王は傷心シンデレラへの溺愛を絶やさない
 彼は用意させることができる側の人間なのだ、となにげないひと言から思い知る。

 やはり私とは違う世界に住んでいる人間ということだろう。

 プレートにはカナッペとチーズ、ドライフルーツが上品に盛られていた。

 こういうかわいい食べ物は円香が好きそうだと思いながら、慎重な手つきでレーズンをつまむ。

 口に入れて噛み締めると、馴染みのあるぶどうの甘い味わいが広がった。

 違うのは私が知っているレーズンよりもっと芳醇で、甘みも凝縮されているところだろうか。枝付き、というのもなんとなくおしゃれだ。

「おいしいです」

「よかった。厳選した甲斐があったよ」

 水無月社長がひとり分の距離を開けて私の隣に座る。

 彼の重みに合わせてソファが沈み、隣同士に座っている事実を実感させた。

 居心地が悪いような、そうでないような微妙な沈黙が落ちる。

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