気高き不動産王は傷心シンデレラへの溺愛を絶やさない
「そ、そうですよね。すみません」

「そう恐縮しなくていい。本当に大丈夫だから」

「でも、私のせいで……」

「そんなふうには思っていない。だからいいんだ」

 優しい言葉も、今はますます申し訳なさを煽るばかりだった。

 いたたまれずにうつむくと、ふとバッグから振動を感じた。

「ごめんなさい、電話みたいです」

 スマホを手に立ち上がろうとして、ソファのやわらかさに身体をとられる。

 ひっくり返る前に背中を支えられたけれど、振り返ってお礼を言う前にスマホから円香の声が響いた。どうやら、画面に指が触れていたようだ。

『もしもし、まだプレザントリゾートにいる?』

 水無月社長が私に向かって、声には出さず唇を動かす。

 このまま電話を続けてかまわないと言ってくれているのを理解し、感謝と謝罪を込めて軽く頭を下げた。

「うん、ホテルにいるよ。今は――」

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