気高き不動産王は傷心シンデレラへの溺愛を絶やさない
「いいんだ。またゆっくりできる時に、軽食の感想も聞かせてくれ」

「はい。……あっ、汚れたドレスと靴なんですが処分していただいてかまいません」

 ぎりぎりのところで思い出せたことにほっとする。

「そういうわけにもいかないだろう。クリーニングしておく。取りに来てくれ」

「取りに……」

「ああ。俺の連絡先なら名刺に書いてあるから」

 たしかに彼の名刺は渡されたけれど、そこに連絡する日が来るかもしれないなんて思いもしなかった。

「……わかりました」

 小さな違和感を覚えつつ、うなずいてから部屋の外へ足を向ける。

「下まで送って――いや、すまない。用事ができてしまった」

 苦々しく言った彼の手にはスマホがあった。

 スタッフの誰かから連絡があったのか、あるいは円香との話を終えた筑波社長からの連絡なのか。

 どちらにせよ、これで本当にさよならだ。

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