気高き不動産王は傷心シンデレラへの溺愛を絶やさない
 私の祈りは神様に届かなかったようだ。

 人員整理が決まった状況で、社員のひとりを会議室に呼び出す――。

 次になにを言われるかは簡単に予想できた。

「いわゆるリストラ、ですか」

「そう思ってもらってもかまいません。……最後まで頑張ってみたけど、上の決定を覆すのはどうしても難しくて。本当にごめんなさい」

 部長は本当に悔しそうに唇を噛み締めていた。

 入社当時から上司としてよくしてくれた彼女が、こんな顔をするなんてよっぽどだ。

「ただ、自主退職してもらえれば、今なら会社都合で退職金を多めにもらえます。こんなことは言いたくないけれど、野瀬さんならどこに行っても即戦力だと思う。だから下手に戦おうとしないで、次の会社に移ったほうが絶対にいいです」

「……ありがとうございます。そういうことなら、転職活動を始めなきゃですね」

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