気高き不動産王は傷心シンデレラへの溺愛を絶やさない
「私もひと通り引き継ぎを終えたら転職するつもり。頑張ってきたのに切り捨てるなんて、こんなのやってられません。長年一緒にやってきた人に退職を勧める仕事なんか二度としたくないですしね」

「そう言ってくれる人がいるだけで救われます。今までお世話になりました」

「こちらこそ、これまで野瀬さんにはたくさん助けられました。新天地でも活躍できるよう、応援してます」

 いい人だなと思いつつ、頭を下げて会議室を出る。

 また部長が別の同僚を呼び出すのが見えて、なんとも言えない気持ちになった。

 退職金をもらえるとはいっても、職がなくなるならのんびりしていられない。

 なぜなら私は、自分の生活費以外に養父母に仕送りをしているからだ。

 早くに亡くなった両親の代わりに親になってくれた親戚夫婦は、大きく育ってくれたならそれでいいと言ってくれたけれど、私の気が済まなかった。

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