気高き不動産王は傷心シンデレラへの溺愛を絶やさない
 ふたりが豊かに、幸せに暮らせるための手伝いをしたくて、半ば強引にお金を受け取ってもらっている。

 今回の件でそれを打ち切る真似はしたくない。じゃあこれからどうするか。

 今後のことを考えていたら、残りの仕事はいつの間にか終わっていた。



 定時を十五分ほど過ぎて退社すると、なにやら会社の外が騒がしい。

「どうかしたんですか?」

 見知った社員の顔を見つけて尋ねてみる。

 彼女は私を振り返ると、人混みの向こうを指さした。

「なんかとんでもない人がいるみたいで」

 なんともざっくりした説明だ。

 とんでもない人とやらが気になって、彼女が示した指の先を見る。

「……え、どうして」

 すらりと長い脚に、頭ひとつ分以上高い身長。抜群のプロポーション、という言葉は女性に向けられることが多いけれど、きっと彼にもふさわしいだろう。

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