気高き不動産王は傷心シンデレラへの溺愛を絶やさない
 そこに、近くの車から降りた人物が駆け寄ってきた。

「社長、またこんなところを見られたら面倒なことになります」

「……そうだな。野瀬さん、車に乗ってもらえるか? 話はそこでしよう」

 名前を呼ばれたことにぎょっとしながら、流されるようにして車に乗せられる。

 あまり車には詳しくないけれど、きっと高級車だろう。

 後部座席に乗せられると、バタンとドアを閉める音がした。そして車がすぐに走り出す。

 知った顔とはいえ、あまりにも無防備に従ってしまった自分を恥じる。

「なにが起きているんですか? どういうことなのか教えてください」

「これを見てくれ」

 隣に座った水無月社長が差し出してきたのは、複数枚の写真だった。

 ホテル内を見て回る私と彼の写真ばかりで、大庭園のものも混ざっている。

 確認しながら、私は自分の顔がこわばっていくのを感じていた。

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