気高き不動産王は傷心シンデレラへの溺愛を絶やさない
「ああ、なんだ。なんでも言っていい。遠慮なく」

 水無月社長が明らかに安堵した様子で前のめりになる。

 やはり報酬を要求したほうが彼のためになるようだ。

「でしたら、転職活動の手伝いをしていただけると……」

「転職?」

「はい。諸事情あって、今の会社を退職するんです。だから新しい職場をご紹介いただけたら、あの、それで充分です」

「……そういう報酬は予想していなかったな」

 腕を組んだ水無月社長が、低く唸って息を吐く。

「もし難しければ、おすすめの職場を教えていただくだけでも」

「ふはっ」

 慌てて言葉を重ねると、運転席で魅上さんが噴き出すのが聞こえた。

「魅上。笑いごとじゃないだろう」

「すみません。そうくるとは思わなかったものですから」

「図々しいお願いだったでしょうか?」

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