気高き不動産王は傷心シンデレラへの溺愛を絶やさない
「いや、その逆だ。君は欲がないんだな。俺も魅上も、金銭の話をしていたつもりだったから」

 あ、と小さく声をあげてうつむく。

 たしかにそっちのほうが、転職先を紹介してもらうよりずっとスマートだ。

「仕事を楽しいと思う気持ちは俺もわかる。だが、本当にそれでいいのか?」

「え、ええと、その、仕送りをしているので」

「仕送り? たしか君のご両親は共働きだったはずだが」

「どうしてそれを?」

「先に言っておくべきだったな。今回の件で、君のことを調べさせてもらった。……勝手な真似をして申し訳ない」

「こういう状況では仕方がないことだと思います」

 複雑な気持ちがないというと嘘にはなるけれど、仕方がないと理解もできる。

 私がどんな人間なのか、彼にわかるはずがないのだから。

「共働きですが、今まで大切に育ててもらった恩返しがしたいんです」

「そうか、君は……」

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