気高き不動産王は傷心シンデレラへの溺愛を絶やさない
 この部屋と比べたら、私が少し前まで住んでいたワンルームは物置と同じだ。

「ここはクローゼットですか?」

 そう言いながら壁にあるドアを開けて、また絶句する。

 部屋の中に、もうひとつ小さな部屋がある。そう思った。

「そうだ。チェストも用意してあるが、容量は足りそうか?」

「この三分の一でも充分だと思います……」

 恐ろしいのは、これが彼の住居の一部でしかないという事実だ。

 改めて、とんでもない相手と結婚してしまったのを実感する。

「こんなに広いと思わなくてびっくりしました。素敵な部屋を用意してくださってありがとうございます」

「面倒に付き合わせているんだ。このくらい当然だろう」

 こんな立派な家だと、広すぎて部屋の隅から動けなくなってしまいそうだ。

「ちなみに」

 志信さんは私を手招きすると、廊下へ導いた。

「寝室も一応ある」

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