気高き不動産王は傷心シンデレラへの溺愛を絶やさない
 きっと意識しているのは私だけで、志信さんは違うのだろう。

「次はリビングを案内しよう」

「はい、よろしくお願いします」

「固いな。ここはもう君の家だぞ」

 こんなに立派な家を自分の家だと思うには、かなり長い年月が必要になる。

 そう考えてから、契約期間の終わりを定めていなかったことに気がついた。

「ひとつ確認し忘れていました。いつまで夫婦生活をするんですか?」

「……少なくとも半年は必要だろう。あまり早く離婚すると、わけありな結婚だと気づかれる可能性がある。一年あればより確実だが、そこは君の都合を優先しよう」

「一年……」

 ひと月でも長いくらいなのに、一年も彼と結婚生活をするなんて想像できない。

「半年にしておくか?」

 表情に不安が滲んでいたのか、志信さんが気遣うように言ってくれる。

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