気高き不動産王は傷心シンデレラへの溺愛を絶やさない
「一年で大丈夫です。変な噂を立てられないための結婚ですし、安全だと思えるまでは続けたほうがいいと思います」

 結婚した意味がなくなるのは避けたくてそう言うと、志信さんが苦笑いした。

「巻き込まれた側だというのに協力的だな。助かる」

「……プレザントリゾートは素敵な場所でしたから」

 まともに見たのはホテルエリアだけだったけれど、それでも彼を見ていればほかのエリアも十二分に素晴らしい場所だとわかる。

「いろんな人の思い出を作る場所なんですよね。じゃあ、傷なんて絶対につけられません」

「ありがたい。……お互い、本物の夫婦に見えるよう頑張ろう」

「はい。よろしくお願いします」

「まずはこの生活に慣れるところからだな」

 そう言った志信さんが、なにげない素振りで私の顔に手を伸ばした。

 長い指が頬に触れた瞬間、びくりと肩が跳ねる。

「時間がかかりそうだ」

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