気高き不動産王は傷心シンデレラへの溺愛を絶やさない
 本当の両親を失った頃の私は、血の繋がらない両親の包み込むような優しさが怖かった。彼らを受け入れたら、両親の死を認めなければいけない気がしたからだ。

 だけどそれも過去の話である。

「実は、その……結婚したんだ。報告が遅くなっちゃってごめ――」

『結婚!? ちょっと待って。……お父さん! 優陽ちゃん、結婚したって!』

 スマホの向こう側から驚きと戸惑いの声が聞こえる。

 バタバタと騒がしい足音が聞こえたかと思うと、母の代わりに父が話しかけてきた。

『優陽ちゃん? お母さんから聞いたけど、結婚ってどういうこと?』

「急な話でごめんなさい。説明すると長くなるんだけど……一時的なもの、の予定」

『ええ?』

 ふたりに真実を告げるかどうか、最後まで悩んだ。

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