気高き不動産王は傷心シンデレラへの溺愛を絶やさない
 顔を合わせる機会が少ないのもあって両親には彼の所業を伝えていない。だから彼らにとっては、関係値が良好な親戚でしかなかった。

「また会う機会があったら、宗吾くんにも私から話しておくよ」

『そういえばまたこっちに戻ってくるんじゃなかったかな? 連絡がきたら優陽ちゃんにも教えるね』

「ん、ありがとう」

 その時は申し訳ないけれど、予定があることにさせてもらおう。

「急に電話しちゃったうえに、こんな話でごめんね。またそのうち会いに行くから」

『うんうん。結婚生活で無理しないように気をつけなさいね』

「はーい。それじゃあ、またね」

 電話を切ってから思いきり息を吐く。

 思ったよりもすぐに受け入れてもらえてよかった。

 もっとあれこれ質問責めに遭うなり、反対されるなりを予想していたから意外だった。

 振り返ってみると、昔からふたりはそうだったように思う。

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