気高き不動産王は傷心シンデレラへの溺愛を絶やさない
 高校の時に円香とふたりで一泊二日の旅行をしたいと言った時も、女の子がふたりで大丈夫なのかと心配はしたけれど、最終的には見守ることにしてくれた。

「ありがとう。お父さん、お母さん」

 電話を切った後なのにそう呟いて、リビングへ向かおうと立ち上がる。

 部屋のドアを開けると、ちょうど向かいの部屋から志信さんが出てきたところだった。

「部屋にいたのか。てっきりリビングにいるのかと」

「両親に結婚の報告をしていたんです。リビングで電話をしたらうるさいかと思って」

「なにか言っていたか?」

「いえ、困ったことがあったら言いなさい、くらいでした」

「……いいご両親だな」

 返答に一瞬疑問を覚えるも、彼がリビングへ向かったのを見てその後に続く。

 彼は私の両親と顔合わせをしていない。

『うちの両親に挨拶をする必要はない。君のほうはどうする?』

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