気高き不動産王は傷心シンデレラへの溺愛を絶やさない
 天井にはシャンデリアが飾られ、エントランスの中央には美しい花が生けられている。床や壁は大理石らしい。ロビーの床にはシックなワインカラーの絨毯が敷かれていた。

「中まですごいね」

「今、私が言おうと思ったのに」

 円香が隣で笑ってくれるから、場違いにも見える場所にいてもさほど緊張せずにいられる。

「もっと気後れすると思ってたけど、意外と平気かも」

「これだけ立派だったらね。でもどうせなら、遠慮なく全部楽しもうよ。もったいないもん」

「そうだね」

 彼女のこういうところが一緒にいて安心するところだ。

 たしかにどうせなら楽しんだほうがお得だと考えて、改めてエントランスホールを見回してみる。

 私たちのような一般人はあまり多くないように見えた。ぱっと目につくのは、これから間違いなく話題になるこの施設を取材に来た記者たちだろうか。

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