気高き不動産王は傷心シンデレラへの溺愛を絶やさない
「いいか、優陽さん」

 志信さんは私の前までやって来ると、目線を合わせるように軽く屈んだ。

「この結婚は、俺が君を付き合わせた結果だ。だから君がなにかしなければならないと思う必要はないし、ここでの生活や俺に対して気を使わなくてもいい」

「そう言われると、余計に落ち着かないんです」

「困ったな。じゃあこういうのは? 必要な時に妻らしく振る舞ってもらう」

「それはもともとのお話と変わらない気が……」

「そうだったか? よく覚えていないな」

 素知らぬ振りをしているけれど、覚えていないわけがない。

「もっとなにか……ええと、食事の用意をするとかは?」

「外で済ませるか、買ってきたものを家で食べるだけで充分だよ」

 たしかに彼は結婚してから今日まで、そう過ごしてきた。

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