気高き不動産王は傷心シンデレラへの溺愛を絶やさない
 忙しい仕事だというのはわかっていたし、私も『好きに食べていいよ』と言われていたから、特に指摘はしなかったけれど。

「それに毎日料理をするのも大変だろう。余計な負担をかけたくない」

「大変じゃありません。むしろそれくらいしかできなくて申し訳ないです」

「……そこまで言うなら、これからはお願いしようか」

「はい!」

 勢いよく返事をすると、志信さんが苦笑する。

「好きなように過ごしていいんだぞ」

「なにもしないほうが落ち着きません。それに、自炊したほうが節約になりますよ」

「……節約」

 ぽつりと言った志信さんが目を丸くするのを見て、失言だったと気づいた。

「あっ。な、なんでもありません。そんなケチくさいことしません、よね」

 以前、スーツのシミの話になった時と同じいたたまれなさを感じる。

 彼と私では生きてきた世界が違うのに、つい自分と同じように考えてしまった。

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