気高き不動産王は傷心シンデレラへの溺愛を絶やさない

 納得したように言った志信さんが、湯呑みを手に取って口もとへ寄せた。

「いろいろ目を通しておいたほうが、話のネタに困らない。ドラマなんかも話題のものは見るようにしているな。商談の時の雑談にちょうどいいんだ」

「へえ……。社長の仕事も大変そうですね。雑談のためにそこまでするなんて」

 彼にとっては私生活も仕事のうちなのかもしれない。

 そこまで気を遣うからこそ、プレザントリゾートを始めとして多くの事業を手掛け、成功を収められたのだろう。

「もう慣れたよ。話題の作品はたしかにおもしろいしな。優陽さんはこういうものを見るほうか? もしおすすめがあったら教えてくれ」

「テレビはあまり見ないんです。だから流行りの話題にも疎くて」

 彼の役に立つチャンスだというのに、残念ながらおすすめできるような作品をなにも思いつかない。

「興味もないのか?」

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