気高き不動産王は傷心シンデレラへの溺愛を絶やさない
 彼もそう考えているから、同居を始めても距離があるのだと思っていた。

 私たちの結婚は世間の目を欺くためのもの。

 先に結婚を発表したおかげで例の写真が持つ効力は薄れたけれど、まだまだ気を抜かないほうがいい。

 ただしそれは、外にいる場合に限る。

 さすがに家の中まで見張るような記者はいないからだ。

「外で夫婦らしくするための練習は必要だろう」

「たしかにそれもそうですね」

 偽装結婚だと知られないよう、同居まで徹底するだけのことはある。

 考えればすぐに思いつけただろうに、言われなければ思い至らなかったのが恥ずかしい。

「そういうことなら、一緒に見たいです。今日は志信さんのおすすめでどうですか?」

「と言われても悩ましいな。……ああ、前に魅上が勧めてきたものでいいなら、配信サイトに上がっていたはずだ」

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