気高き不動産王は傷心シンデレラへの溺愛を絶やさない
 それを知ったのは、翌日のために漬けておいた煮卵を見つけた志信さんが、夜食にしてもいいかと控えめに言ってきた時だ。

 食べ方はとても上品だし、早食いというわけでもない。

 それなのに彼の前からあっという間におかずが消えていく。

 その食べっぷりは私の専業主婦としてのやる気を大いに刺激した。

 今日も食べる姿をこっそり盗み見て、満足してもらえたようだとほくそ笑む。

「さっきからなんだか楽しそうだな。いいことでもあったのか?」

「おいしそうに食べてくれるなぁって思ったんです。うれしいです」

「実際、うまいからな。夕飯を食べている途中なのに、もう明日の朝食が楽しみだよ」

 ふふふ、と声をあげて笑うと、志信さんも笑ってくれた。

 契約結婚で妻として過ごさなければならないなんて大丈夫だろうか、と心配していたのに、完全に杞憂だった。

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