神殺しのクロノスタシス6
…このお墓、墓石に刻んである文字って…もしかして。

「何だよ。何か分かったのか?」

「…数字…」

「は?」

「これ、墓石の一行目に書いてある単語…。これって、私達の言葉で言う…数字なんじゃないかな?」

「…数字?」

順番に並んでいる墓石、その一番上に刻まれた文字には、法則性があった。

例えば私達が数を数える時って、正の字を順番に書いていくでしょう?

それと同じように、この墓石に刻んである文字も、段々と文字数が増えていっている。

墓石は所々崩れ、判別出来ないものもあるから、確かなことは言えない。

ただそんな気がしているだけで、本当は偶然なのかもしれないけど…。

「成程、数字か…。ってことは、こいつらは名前じゃなくて、個体を番号で識別してるってことか…?」

「…その可能性は高いね」

「へぇ。さすがだな、そんなことが分かるとは…」

いや、単なる閃きであって、確かな証拠がある訳じゃないから…。

…しかも。

「…とはいえ、それが分かったから何だ、って話だが」

「うっ…」

…ジュリス君の言う通り。

墓石の解読なんかしたって、意味ないんだよね。

「俺達は何も、魔物の生態を調べに来た訳じゃないんだぞ」

「そ、そうなんだよね…」

魔物もお墓を作る文化があるんだとか、墓石に数字を刻む習慣や、文明があったんだとか。

それはそれで興味深いけれど、でも、今回は冥界研究の為にやって来た訳じゃない。

目的を見失っちゃいけない。

「竜の祠を探さないとね…」

「その前に、ベリクリーデ達との合流が優先だな」

その通り。

私も、羽久のことが気になる。お墓のことより遥かに。

「大丈夫かな、羽久…。今、何処にいるんだろう…」

「…そんな時の為に、コレなんじゃないのか?」

え?

ジュリス君は、ポケットから「それ」を…ここに来る時、シュニィちゃんが渡してくれた魔法道具を取り出した。

そうだ。それがあったんだった。使わなきゃ。

こんな時の為に使うんだよね。

…しかし。

「…!これ…」

ジュリス君が目を見開き、続けて私も、自分のポケットから同じものを取り出した。

「…!」

その変わり果てた状態を見て、私も思わず言葉をなくしてしまった。
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