神殺しのクロノスタシス6
こうして、行動を共にすることになった僕とすぐりさん。

お互い、相棒とは引き離されたものの…一緒に冥界遠征に来た仲間として、お互いの無事を確認出来たのは大きい。

さて、それじゃ改めて。

「…ここ、何処だと思います?すぐりさん」

「さー。全然分かんないね」

僕とすぐりさんが、今居る場所は。 

周囲を植物に囲まれた、さながら…ジャングルのような場所だった。

…冥界に、ジャングルなんてあるんですね。
 
「ゴリラがターザンしてそうな場所ですね…」

「何?それ」

「いや、こっちの話ですけど…」

少なくとも、この辺りに竜の祠があるとは思えないが…。

何処なんでしょうね、ここ…。

「このジャングルに、天音さん達もいるんですかね?」

だとしたら、植物を掻き分けて探しに行くのは大変そうですね。

すぐ迷子になりそう。

しかし。

「さぁ、気配は感じない…けど、近くに海があるよ」

「え?」

「海の匂いがする」

…そうなんですか?

元暗殺者の嗅覚を見くびってはいけない。 

「あっちの方角。ナジュせんせーも感じない?」

「…」

僕もすぐりさんのように、神経を集中させて周囲の匂いを嗅いでみた。

すると、植物の匂いや土の匂いと一緒に、かすかに磯の香りを感じた。

あ、本当だ…。言われてみたら。

「確かに、海っぽい匂いがしますね」

「行ってみる?」

「そうですね…。アテがある訳じゃありませんし、行ってみましょうか」

このままずっとジャングルにいたら、野生動物…ならぬ。

野生魔物に襲われるかもしれませんからね。

僕はすぐりさんと共に、海の方角に向かって歩き出した。

「何だか不気味な場所だねー。ここ」

歩きながら、すぐりさんはそう呟いた。

まぁ…冥界ですからね。

「すぐりさんもそう思います?」

「ナジュせんせーも?」

「えぇ。お化け屋敷か、未開の土地でも歩いてるような気分です」

心がざわざわして落ち着かない、って言うか…。

周りに誰もいないのに、大勢の何者かに常に見張られているような…そんな不安な気分にさせられる。

何なんでしょうね、これ。

…そういえばさっき、すぐりさんに起こされて目を覚ます前。

精神世界で、リリスが僕に何か言ってたような…。

あの時、リリスは僕に何を言ったんだろう…?

などと、考えているうちに。

「ナジュせんせー、見えてきたよ」

「あ、はい…」

鬱蒼と茂っていた植物を掻き分けて、前に進むと。

突然、開けた場所に出た。

より一層、磯の香りが強くなると同時に…生温かい、海の風が頬に触れた。
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