神殺しのクロノスタシス6
…うわー…。

またうわーって思っちゃった。でも、そりゃ思いますよ。こんなもの見たら。

体感、ほんの30分ほど前にもらったばかりなのに。

大昔の骨董品みたいになってる。

「海水で錆びた…にしても、こんな僅かな時間でこれほどにはなりませんね」

「そもそも、俺達は濡れてないしねー。海水で錆びたと言うより、けーねん劣化で錆びたって感じ」

良いこと言いますね、すぐりさん。本当にそんな感じ。

冥界に時間の流れは、現世のものとは違う。…と、リリスが言っていた。
 
恐らくそのせいだろう。この魔法道具が錆びてしまったのは。

試しに息を吹き込んでみたけど、ピーともうんともすんとも鳴らない。

どころか、力が入ったせいか、吹き口がボロッと崩れ落ちた。

あぁ…。笛、崩壊。

これじゃあ、仲間を呼ぶどころじゃないですね。

僕とすぐりさんの笛がこんな有り様じゃ、他の仲間達も同じことになっていてもおかしくない。

「…どうやら、簡単に合流させてはもらえないようですね」

「どーする?やっぱりイカダでも作って、無人島脱出する?」

「あるいは、下手に動かず合流の機会を待つか…」

これが通常の遭難だったら、下手に動かず、その場で救助を待つのが鉄則ですけど。

…生憎、今は悠長に救助なんて待ってる場合じゃないんですよね。

かと言って、今から無人島脱出用のイカダを作るのも…。

僕達の目的は、竜の祠を見つけることと、はぐれた仲間と合流すること。

冥界の無人島を脱出することではない。

目的を履き違えて、時間を無駄にするのは馬鹿らしいですよ。

…じゃあ、ここは3つ目の選択肢…。

「探索してみましょう。無人島探索」

「それで、何か見つかるの?」

「さぁ?でもイカダを作るよりは、この島を攻略したいですね、僕は」

何もないってことはないと思うんです。

野生の勘ですけど。

「ふーん…?」

「付き合ってくれます?すぐりさん」

「いーよ。今は一人にならない方がいーだろーし」

じゃあ、宜しくお願いします。

僕はすぐりさんと共に、浜辺から、もう一度ジャングルに移動した。
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