神殺しのクロノスタシス6
『八千歳』を探して歩いていたのに、見つけたのはこの人だった。

まぁ、仲間を一人でも見つけることが出来たんだから、御の字としておこう。

どうせなら他の仲間が良かったなぁ。

「あなたが何考えてるのか分かりますよ…。何で、唯一見つけた仲間がコイツなんだろう…って思ってますよね?」

「どうせなら、他の仲間が良かったなぁとは思ってる」

「あなたは正直な人ですね…。でも、これがあなたの星回りなんですよ」

「そっか」

じゃあ、諦めるしかないね。

「それに、俺だって不本意なんですよ…。来たくもないのに冥界遠征メンバーに選ばれて、それだけでもうんざりしてたのに…」

「うん」

「冥界の『門』を潜った途端、キュレムさんと引き離され…。挙げ句、こんな見るからに面倒臭そうな、そして気持ち悪い場所に飛ばされ…」

「うん」

「心底うんざりしてるんです。俺が何をしたって言うんでしょうね?何も悪いことしてないはずなのに、何でこんな目に遭うんでしょう。どう思います?令月さん」

「そういう星回りだからじゃないかな」

「成程…。そう来ましたか…」

残念だね。

僕もそういう星回りだから。諦めるしかない。

「それで、何で寝転んでるの?怪我でもした?」

「いいえ?一回起きてみたんですけど、なんか面倒臭そうな場所に来たなーと思って、考えるのが嫌になったんで寝そべってみました」

成程。そういうことだったんだ。

横になって、思考停止してたんだね。

「でも、その床ねちょねちょして、気持ち悪くない?」

「えぇ、気持ち悪いですね…。しばらく我慢してみたんですけど、そろそろ我慢出来なくなってきました」

あ、起きた。

いかにも億劫そうに、ルイーシュは上半身を起こした。

おはよう。

「全く、横になって休むことも許してくれないとは…。冥界っていうのはなんて酷い場所なんでしょう」

「…ねぇ、背中」

「はい?」

「背中、服破れてるよ」

ルイーシュの背後に周り、その背中を見ると。

衣服の背中の部分に、穴が開いていた。

服が破れたせいで、背中の皮膚が剥き出しになっている。

…これって…。

『門』を潜った時に、こんな穴はなかったよね?

「何処かに引っ掛けたの?」

「さぁ、横になってただけなんですが…」

「…破れてるって言うより、これ…」

「溶けてるんでしょうね。道理で、さっきから背中がピリピリするなぁと思ってたんです」

あぁ、そういうこと。

このねちょねちょした酸性の粘液に、衣服の背中を溶かされたんだ。

「じゃあ、もう少し長く寝てたら、服どころか、背中の皮膚まで溶けてたかもね」

「うわぁ…。何が何でも、意地でも俺を寝かせないつもりですね。やっぱり最悪ですよ、冥界…」

って言うか、よく服が破けるまで横になってたね。

こんな気味の悪い、何が起こるか分からない場所で、平気で転がっていられるなんて…。

この人、意外と大モノなのかも。

見習わないとね。
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