神殺しのクロノスタシス6
大きさは、普通の猫と同じくらい。
それなのに、華奢な右半身とは対照的に、左半身が異様に膨れ上がっていた。
その左半身に、子供が殴り書きしたような、雑でボロボロの羽が片方だけ、のりでくっつけたように生えていた。
その魔物の首に…何故か、いろりが普段つけているのと同じ、鈴付きの首輪が嵌まっていた。
魔物は俺達にとって、得体の知れない化け物だけど。
この魔物は、また別次元の異様さだった。
でも、不思議と恐ろしいとは思わない。
だって、その姿はまるで…。
ケルベロスと人間のキメラである、マシュリの姿と同じ…。
「…!マシュリ…」
「えっ?」
「マシュリ…なのか?」
根拠がある訳じゃない。ただ、そんな気がしただけだ。
異形の魔物がこちらを見つめる目に、敵意は一切なかった。
むしろ、俺達を助ける為に現れたように…。
「あれがマシュリ…?本当に?」
ベリクリーデには信じられないようで、訝しんで見ていた。
気持ちは分かるよ。俺だって、確かな証拠はないから。
マシュリはもう死んだのだ。7つ目の心臓を取り戻さない限り、生き返ることはない。
だから、こんなところにマシュリがいるはずがない。…はずがない、のに。
「あっ…」
その『マシュリ』は、しばし俺達をじっと見つめたかと思うと。
祭壇の向こうに、タッと駆け出した。
「マシュリ!まっ…!」
思わず、マシュリと声をかけてしまった。
すると、その『マシュリ』は、俺に応えるように、くるりとこちらを振り向いた。
その目で分かった。
その目で全部分かったよ。
…ついてこいって言ってるんだな。
「…行こう、ベリクリーデ。作戦変更だ」
「どういうこと?逃げるの?」
「あぁ、逃げる。…あの『マシュリ』についていく」
「…そう、分かった」
ベリクリーデは、多くを聞かなかった。
俺の、根拠のない直感を信じてくれた。
「じゃあ、逃げよう。包囲を突破しないと」
「大丈夫だ。マシュリが導いてくれる」
俺とベリクリーデは、こちらを取り囲む魔物達に背を向け、『マシュリ』の後を追って走り出した。
途端、逃がすものかと、取り囲んでいた魔物達がこちらに向かって飛びかかってきた。
うへぁ。やっぱり来るのかよ。
『マシュリ』の後ろを追い掛ける俺とベリクリーデ。…の、後ろを追い掛ける魔物達。
地獄みたいな鬼ごっこの開始である。
こちらとしては、全く笑い事じゃないけどな。
「やべぇ、あいつら足はえぇぞ…!」
「飛んでるからね。人間の私達より速いのは当然だよ」
ベリクリーデの冷静さよ。
でも…!
「追い付かれるぞ、このままじゃ…!」
何処まで逃げるのか。『マシュリ』はタタッと走るばかりで、こちらを振り返らない。
黙ってついてこいってことなんだろう。それは分かるけど、分かるけど…!
背中に段々近づいてくる、魔物達の熱い吐息を感じながら、ベリクリーデのように冷静には走れない。
畜生、今振り返ったらきっと地獄絵図。
後ろを追い掛けてくる魔物達との距離は、あと何メートルだ?
きっと、もう間近に迫っているに違いない。
焦りと恐怖で、思わず足が竦みそうになったその時。
『マシュリ』が、ピタリと足を止めた。
それなのに、華奢な右半身とは対照的に、左半身が異様に膨れ上がっていた。
その左半身に、子供が殴り書きしたような、雑でボロボロの羽が片方だけ、のりでくっつけたように生えていた。
その魔物の首に…何故か、いろりが普段つけているのと同じ、鈴付きの首輪が嵌まっていた。
魔物は俺達にとって、得体の知れない化け物だけど。
この魔物は、また別次元の異様さだった。
でも、不思議と恐ろしいとは思わない。
だって、その姿はまるで…。
ケルベロスと人間のキメラである、マシュリの姿と同じ…。
「…!マシュリ…」
「えっ?」
「マシュリ…なのか?」
根拠がある訳じゃない。ただ、そんな気がしただけだ。
異形の魔物がこちらを見つめる目に、敵意は一切なかった。
むしろ、俺達を助ける為に現れたように…。
「あれがマシュリ…?本当に?」
ベリクリーデには信じられないようで、訝しんで見ていた。
気持ちは分かるよ。俺だって、確かな証拠はないから。
マシュリはもう死んだのだ。7つ目の心臓を取り戻さない限り、生き返ることはない。
だから、こんなところにマシュリがいるはずがない。…はずがない、のに。
「あっ…」
その『マシュリ』は、しばし俺達をじっと見つめたかと思うと。
祭壇の向こうに、タッと駆け出した。
「マシュリ!まっ…!」
思わず、マシュリと声をかけてしまった。
すると、その『マシュリ』は、俺に応えるように、くるりとこちらを振り向いた。
その目で分かった。
その目で全部分かったよ。
…ついてこいって言ってるんだな。
「…行こう、ベリクリーデ。作戦変更だ」
「どういうこと?逃げるの?」
「あぁ、逃げる。…あの『マシュリ』についていく」
「…そう、分かった」
ベリクリーデは、多くを聞かなかった。
俺の、根拠のない直感を信じてくれた。
「じゃあ、逃げよう。包囲を突破しないと」
「大丈夫だ。マシュリが導いてくれる」
俺とベリクリーデは、こちらを取り囲む魔物達に背を向け、『マシュリ』の後を追って走り出した。
途端、逃がすものかと、取り囲んでいた魔物達がこちらに向かって飛びかかってきた。
うへぁ。やっぱり来るのかよ。
『マシュリ』の後ろを追い掛ける俺とベリクリーデ。…の、後ろを追い掛ける魔物達。
地獄みたいな鬼ごっこの開始である。
こちらとしては、全く笑い事じゃないけどな。
「やべぇ、あいつら足はえぇぞ…!」
「飛んでるからね。人間の私達より速いのは当然だよ」
ベリクリーデの冷静さよ。
でも…!
「追い付かれるぞ、このままじゃ…!」
何処まで逃げるのか。『マシュリ』はタタッと走るばかりで、こちらを振り返らない。
黙ってついてこいってことなんだろう。それは分かるけど、分かるけど…!
背中に段々近づいてくる、魔物達の熱い吐息を感じながら、ベリクリーデのように冷静には走れない。
畜生、今振り返ったらきっと地獄絵図。
後ろを追い掛けてくる魔物達との距離は、あと何メートルだ?
きっと、もう間近に迫っているに違いない。
焦りと恐怖で、思わず足が竦みそうになったその時。
『マシュリ』が、ピタリと足を止めた。