神殺しのクロノスタシス6

シルナside

――――――…こちらは私、シルナとジュリス君のペア。

お墓で目を覚ました私とジュリス君は、持ってきたチョコレートが全滅していることに気づいた後。

お墓に刻まれている文字が、もしかして数字じゃないかと話し合った後。

そうだ、こんな時こそシュニィちゃんに渡された魔法道具の出番、とばかりに。

ここに来る時に持ってきた笛を、ポケットから取り出したんだけど…。

…残念ながら、その笛は朽ちて錆びてしまって、全く使い物にならなかった。

試しに息を吹き込んでみたら、ボロっと崩れて、跡形もなく笛は粉々になってしまった。

非常に悲しい。

そして怖い。

そろそろ、私は限界だよ。

「う、うぅ…。ジュリス君、大丈夫?何もいない?いないよね?」

「…なんもいねーよ…」

「そ、そ、そうだよね!大丈夫だよね。大丈夫、大丈夫…だいじょ、」

必死に、そう自分に言い聞かせようとした丁度時。

突然、強い風が吹いて、周囲の木々をざわざわと揺らした。

「ぴぇぇぇっ!」

「ちょ、アホかあんた。くっつくんじゃねぇ。ただの風だろ!」

心臓がヒュッてなったよ。ヒュッって。

もし一人だったら、その場にへなへなと崩れ落ちて、腰が砕けて立てなかったと思う。

思わずジュリス君に飛び付いて、必死に平静を保っている状態。

「ぴぇぇぇ…」

「風くらいでビビるなよ…。幽霊が出てきた訳でもないのに」

「で、で、出てきてからじゃ遅いんだよっ…?」

お、お化けになんか出会ってしまったら、私はどうしたら良いんだ。

「あんたなぁ…。イーニシュフェルトの聖賢者なんだろ?」

「も、も…元、ね…」

今は別人だよ。

とてもじゃないけど、「聖」賢者とは言えない。

「邪」賢者だったら納得するけどね。

「だったら、幽霊の一体や二体くらい、見たことあるんじゃねぇの?」

「そ、それはどうかな…」

「つーか、聖なる神に平気で喧嘩を売る癖に、幽霊にはビビるのかよ。意味分かんねぇな」

「…」

それを言われちゃ…言い返す言葉がないけど。

それはそれ、これはこれって納得してもらえないかな…。
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