神殺しのクロノスタシス6
…今度は化け猫まで出てきたんですけど。

でも、今僕達を追いかけているあのデカブツの化け物に比べたら、化け猫くらい可愛いものですよね。

…それに、何より目を引くのは…。

「ナジュせんせー。あの、首輪…」

「…えぇ、そうですね」

すぐりさんも気づいてますよね。…当然。

あの化け猫がつけている首輪、あれはマシュリさんの…。

化け猫に姿を変えた『マシュリさん』は、僕達をじっと見つめ。

それから、ついてこいとでも言うように駆け出した。

…成程、そういうことですか。

「済みません、すぐりさん。作戦変更です」

「その方が良さそーだね」

ここで足止めするつもりでしたけど、それはやめます。

『マシュリさん』が、導いてくれるみたいですから。

僕はそれを信じて、ついていきますよ。

『マシュリさん』は、出来るだけ落ちている残骸が少ない方に、少ない方に誘導してくれているようだった。

一体何処に向かっているのか。『マシュリさん』は建物の外ではなく、どんどん建物の奥深くに向かっていた。

こういう時は、つい外に逃げたくなるものですけど…。

建物中を逃げ回って、もしそこが行き止まりだったら、どうしようも…。

「…!」

『マシュリさん』が足を止めたのは、本当に行き止まりの部屋だった。

誘い込まれてしまいましたね。…このままじゃ、後ろから追いかけてくる化け物に捕まってしまう。

…けれど、『マシュリさん』は逃げ道を示してくれていた。

『マシュリさん』が足を止めた行き止まりの部屋には、亀裂が入っていた。

赤黒い、時空の裂け目が。

『マシュリさん』はその裂け目の横に立ち止まって、こちらをじっと見ていた。

…ここに飛び込め、ってことですね?分かりますよ。

ただし、その勇気があるかどうかは別の話ですけどね。

「さて、どうします?…すぐりさん」

「どーもこーも、このままじゃ追いつかれるんだから…。選択肢は一つでしょ」

ですよねー。

済みませんね、分かりきってること聞いてしまって。

じゃあ、行きましょうか。

僕とすぐりさんは、同時に裂け目に向かって飛び込んだ。

果たして、何処に繋がっているのやら。

後は野となれ山となれ、ってね。






「…!」

裂け目に飛びこむなり、強い光に包まれ。

再び目を開けると、そこにあったのは、古ぼけた洞窟の入り口だった。




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