神殺しのクロノスタシス6
無事に、化け物の胃の中から脱出することに成功した。

しかし、ここから更なるピンチが僕達を襲う。

「ふー、やれやれ。ようやく出られっ…、」 

「グギャアァァァァ!!」

「…めちゃくちゃお怒りですね」

そのようだね。

胃に穴を開けられた大男の化け物は、雄叫びをあげながらこちらを睨んだ。

平和的に話し合って解決…なんて出来そうな様子じゃないね。

そもそも、冥界の言葉は通じない。

一体どんな回復速度をしているのか、僕が風穴を開けたお腹の傷は、既に癒えていた。

しかし、痛みが消えてなくなる訳ではない。

大男が僕達を睨む目は、「よくもやりやがったな」と訴えかけていた。

そして。

「ギャアァァァ!」

再び雄叫びをあげながら、巨大な手のひらを伸ばして、僕達を掴もうとした。

もう一度僕達を食べて、今度は丸呑みじゃなくて、歯で磨り潰して食べてやろうと。

折角出られたと思ったのに、また食べられたら堪らないね。

僕とルイーシュは、大男の手のひらから逃れる為に走り出した。

「うわぁ。何が嬉しくて、こんな化け物と追いかけっこを…!」

愚痴りたくなる気持ちは分かるけど。

もう一回食べられる訳にはいかないから、逃げるしかない。

…しかし。

逃げるだけでも、簡単なことではなかった。

あの大男、デカブツの癖に、動きはかなり俊敏だ。

対して僕達は、ちょこまかと走って逃げるしかない。

おまけに足場が悪く、真っ直ぐ走るだけでも容易なことではなかった。

…不味いね。このままじゃ掴まりそう。

何処かに隠れる場所があれば良いんだけど、残念ながら、ここは非常に見通しの良い荒野。

隠れる場所などありそうもない。

じゃあ、いっそ立ち向かうか?

一瞬そう考えたけど、僕はすぐにその考えを棄却した。

立ち向かうのは無謀だ。あまりにも…「物量差」があり過ぎる。

先程お腹の中を一刀両断した時に、小太刀に腹の脂肪がべったりとついていて、切れ味も相当落ちている。

さすがに、この状態じゃ戦うのは無理。

かと言って、このまま逃げ続けるのもジリ貧…。
 


…と、思ったその時だった。

「…!」

僕とルイーシュの逃げ道を塞ぐように、前方に新たな化け物が出現した。
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